住宅ローンの返済中に高額な医療費を支払い、さらにふるさと納税も活用したいとお考えではありませんか?
確定申告の準備を進める中で、これらの複数の控除が絡み合うと「ふるさと納税の上限額が正確にわからない」「計算の優先順位が複雑すぎる」といった壁に直面する方は少なくありません。特に、住宅ローン控除が2年目以降で、高額療養費制度を利用した医療費控除や、セルフメディケーション税制の適用を検討している場合、その複雑さは一層増します。
【最重要】まず知っておくべきは、医療費控除とセルフメディケーション税制は「選択制」であり、併用はできないという点です。 どちらか一方のみを選択し、適用することになります。
この記事を読めば、専門的な知識がなくても、住宅ローン控除、医療費控除(またはセルフメディケーション税制)、ふるさと納税の控除を正確に計算するための「正しい優先順位」と「具体的な手順」が分かります。最終的なゴールは、あなたが損をすることなく、最も効果的なふるさと納税額を算出し、最大限に制度を活用することです。
さあ、複雑に絡み合った控除の糸を、一つずつ丁寧に紐解いていきましょう。

全体像を把握!ふるさと納税上限額が決まるまでの計算フローと優先順位
複数の控除が絡む場合、計算の「優先順位」を理解することが何よりも重要です。誤った順序で計算してしまうと、ふるさと納税の上限額が大きく変動し、結果的に損をしてしまう可能性があります。
ここでは、所得の確定からふるさと納税の上限額算出に至るまでの全体像と、それぞれの控除が適用される優先順位をフローチャートで見ていきましょう。
※所得確定からふるさと納税上限額計算までの流れを示す、視覚的に分かりやすいフローチャート画像がここに挿入されます。
控除計算の優先順位は以下の通りです。
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優先順位1:所得の確定(給与所得など)
- まずは年間の収入から、給与所得控除などを差し引いて「所得」を確定させます。これがすべての計算の出発点となります。
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優先順位2:所得控除の計算(医療費控除 or セルフメディケーション税制など) → 課税所得の確定
- 所得が確定した後、次に各種「所得控除」を差し引きます。医療費控除やセルフメディケーション税制、社会保険料控除、生命保険料控除などがこれに該当します。この所得控除後の金額が「課税所得」となり、所得税率や住民税額の基礎となります。
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優先順位3:税額控除の計算(住宅ローン控除など) → 所得税額の確定
- 課税所得が確定し、所得税額が計算された後に、所得税額から直接差し引かれるのが「税額控除」です。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)はここに該当します。
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優先順位4:上記を基にしたふるさと納税上限額の算出
- 最終的に、Step2で確定した課税所得と、Step3で計算された所得税額、そして住民税額(課税所得に基づく)を基に、ふるさと納税の控除上限額が算出されます。
このように、所得控除が税額控除よりも先に計算されるという点をしっかりと押さえることが、正確な上限額を導き出す鍵となります。
Step1:医療費控除 vs セルフメディケーション税制、どちらを選ぶべきか
先に述べた通り、医療費控除とセルフメディケーション税制は、同じ年に併用することができません。 どちらか一方を選択して適用することになります。ご自身の状況に合わせて、より有利な方を選ぶことが重要です。
ここでは、それぞれの制度の概要と、どちらを選ぶべきかの判断基準を解説します。
※医療費控除とセルフメディケーション税制の「対象者」「対象費用」「計算式」「提出書類」をまとめた比較表がここに挿入されます。
医療費控除の概要と計算式
- 対象となる費用: 納税者本人または生計を同一にする配偶者や親族のために支払った医療費(病院での診察費、薬代、入院費、通院交通費など)が対象です。
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控除額の計算式:
(実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補填された金額) - 10万円
または
(実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補填された金額) - (総所得金額等 × 5%)
(上記いずれか少ない方の金額。ただし、控除額の上限は200万円)※「総所得金額等 × 5%」は、総所得金額等が200万円未満の場合に適用されます。多くの場合、10万円を超えるかどうかが判断基準となります。
セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費)の概要と計算式
- 対象となる費用: 特定の健康診断や予防接種などを受けている人が、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品および一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した場合の費用が対象です。
- 控除額の計算式:
(特定一般用医薬品等の購入費の合計額 - 1万2,000円)
(控除額の上限は8万8,000円)
どちらを選ぶべきか?一般的な判断基準
多くの場合、「実際に支払った医療費(保険金等で補填された金額を除く)が10万円を超えるか」が選択の大きな基準となります。
- 10万円(または総所得金額等の5%)を超える高額な医療費がかかった場合 → 医療費控除が有利になる可能性が高いです。
- 10万円には満たないものの、スイッチOTC医薬品の購入費が1万2,000円を超える場合 → セルフメディケーション税制が有利になる可能性があります。
高額療養費制度を利用した場合の注意点
高額療養費制度を利用して医療費の払い戻しを受けた場合、実際に支払った医療費から、支給された高額療養費の金額を差し引いた上で、医療費控除の計算を行う必要があります。この「補填された金額」を差し忘れると、過大な控除を申請してしまうことになるため、注意が必要です。
例えば、医療費が50万円かかり、高額療養費として30万円が戻ってきた場合、医療費控除の対象となるのは「50万円 – 30万円 = 20万円」から基準額(10万円など)を引いた金額となります。
Step2:課税所得の計算(住宅ローン控除より先に所得控除を反映)
ふるさと納税の上限額を算出する上で、「課税所得」は非常に重要な基礎となります。なぜなら、所得税や住民税の金額がこの課税所得に基づいて決まり、ふるさと納税の控除上限額もこれらの税金に連動するからです。
Step1で選択した医療費控除、またはセルフメディケーション税制を含む各種所得控除は、この段階で総所得金額から差し引かれます。
課税所得の計算式:
総所得金額 - 各種所得控除額(医療費控除等を含む) = 課税所得金額
例えば、給与所得が600万円で、社会保険料控除が80万円、生命保険料控除が4万円、医療費控除(またはセルフメディケーション税制)が15万円だった場合、課税所得は次のようになります。
600万円 - (80万円 + 4万円 + 15万円) = 501万円
この課税所得金額に基づいて、適用される所得税率が確定します。課税所得が少なければ少ないほど、適用される所得税率も低くなる傾向にあります。
Step3:住宅ローン控除(2年目以降)が上限額に与える影響とは
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、所得税から直接差し引かれる「税額控除」です。つまり、Step2で課税所得が確定し、所得税額が計算された後に適用される控除となります。
住宅ローン控除の適用が2年目以降の場合、通常は勤務先の年末調整で手続きが完了するため、確定申告は不要となるケースが多いです。しかし、医療費控除やセルフメディケーション税制を適用する場合は、別途確定申告が必要になります。
住宅ローン控除と住民税、ふるさと納税の関係
住宅ローン控除で特に注意が必要なのは、所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除額の一部が、住民税から控除される点です。この住民税からの控除額が、ふるさと納税の住民税控除分と「枠を取り合う」関係になるため、結果的にふるさと納税の上限額に影響を与えます。
具体的には、住宅ローン控除によって所得税が減額されると、所得税からの控除額が少なくなる分、住民税からの控除額の割合が増えます。ふるさと納税の控除額の大部分は住民税からまかなわれるため、住民税の控除枠が住宅ローン控除によって使われると、その分ふるさと納税で控除できる金額の「枠」が減ってしまう、という仕組みです。
この影響を正確に把握するためには、ご自身の所得税額や住民税額がいくらになるのかを、医療費控除を適用した後の課税所得で計算することが不可欠です。

Step4:【最終計算】3つの控除を反映した上限額の算出方法
これまでのステップで確定した「課税所得」と「所得税率」「住民税所得割額」を基に、ふるさと納税の控除上限額を具体的に算出します。
ふるさと納税の控除上限額を計算する基本的な式は以下の通りです。
ふるさと納税控除上限額の計算式:
(住民税所得割額 × 20%)÷ (90% - 所得税率 × 1.021) + 2,000円
この計算式における「住民税所得割額」と「所得税率」が、Step2で計算した課税所得と、Step3で考慮した住宅ローン控除の影響を受けて変動します。
- 所得税率: Step2で確定した課税所得によって決まります。所得控除(医療費控除など)が適用され課税所得が減ることで、適用される所得税率が下がる場合があります。
- 住民税所得割額: Step2で確定した課税所得に基づき計算されます。こちらも所得控除によって変動します。また、住宅ローン控除によって住民税から控除される金額がある場合、その分が考慮された後の金額で計算する必要があります。
シミュレーションサイトだけでは対応できない微調整の重要性
多くのふるさと納税サイトでは、簡単な入力で上限額をシミュレーションできます。しかし、高額療養費制度を利用した医療費控除や、住宅ローン控除の住民税からの控除分が複雑に絡み合うケースでは、サイトの簡易シミュレーションだけでは正確な上限額を把握しきれないことがあります。
特に、医療費控除によって課税所得が大きく変動し、適用される所得税率が変わるようなケースでは、上記の計算式を使ってご自身で細かく調整するか、専門家の意見を聞くことが推奨されます。
【年収・家族構成別】3パターンの計算シミュレーション
具体的な数値で計算過程を見ていきましょう。ここでは、説明の簡略化のため、基礎控除や社会保険料控除などの一般的な所得控除は一定と仮定し、医療費控除や住宅ローン控除がふるさと納税の上限額にどう影響するかを中心に解説します。
※上記3パターンのモデルケースにおける、所得、各種控除額、課税所得、所得税率、住民税所得割額、そして最終的なふるさと納税上限額の具体的な計算過程と結果データがここに挿入されます。
ケース1:年収500万円(独身)/ 住宅ローン控除20万円 / 医療費控除15万円
- 前提: 給与所得控除後の所得額から、基礎控除、社会保険料控除などを差し引いた課税所得が、医療費控除適用前でX円と仮定します。
- 医療費控除の適用: 医療費控除15万円を所得控除に加算。これにより、課税所得がY円に減少します。
- 所得税率の決定: 減少した課税所得Y円に基づき、所得税率が決定(例:10%)。
- 住宅ローン控除: 所得税額から20万円の税額控除。所得税で控除しきれない場合は、住民税から控除されます。
- ふるさと納税上限額への影響: 医療費控除によって課税所得が減り、所得税率が下がったことで、ふるさと納税の控除上限額は上がる可能性があります。しかし、住宅ローン控除による住民税からの控除枠使用も考慮に入れる必要があります。
ケース2:年収700万円(配偶者・子1人)/ 住宅ローン控除25万円 / セルフメディケーション税制選択(5万円控除)
- 前提: 扶養控除や配偶者控除が適用され、セルフメディケーション税制適用前の課税所得がA円と仮定。
- セルフメディケーション税制の適用: 5万円を所得控除に加算。課税所得がB円に減少。
- 所得税率の決定: 課税所得B円に基づき、所得税率が決定(例:20%)。
- 住宅ローン控除: 所得税額から25万円の税額控除。
- ふるさと納税上限額への影響: 医療費控除よりも控除額は少ないものの、セルフメディケーション税制の適用により課税所得が減ることで、ふるさと納税上限額にプラスの影響。住宅ローン控除の住民税枠との兼ね合いも計算します。
ケース3:年収900万円(共働き・子2人)/ 住宅ローン控除30万円 / 高額療養費利用後の医療費控除20万円
- 前提: 高額所得のため、所得控除による節税効果が大きいケース。医療費控除適用前の課税所得がC円と仮定。
- 医療費控除の適用: 高額療養費利用後で20万円を所得控除に加算。課税所得がD円に減少。
- 所得税率の決定: 課税所得D円に基づき、所得税率が決定(例:23%)。高所得層は所得税率が高いため、所得控除による節税メリットが大きい。
- 住宅ローン控除: 所得税額から30万円の税額控除。
- ふるさと納税上限額への影響: 高額な医療費控除によって課税所得が大きく減少し、高い所得税率から低い税率への変化があれば、ふるさと納税の上限額は大きく増加する可能性があります。同時に、住宅ローン控除による住民税からの控除も高額になるため、その影響を詳細に計算することが重要です。
これらのシミュレーションを通して、ご自身の状況に近いケースを参考に、具体的な計算を進めてみてください。
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まとめ:正しい順序で計算し、ふるさと納税を最大限活用しよう
本記事では、住宅ローン控除(2年目以降)、高額療養費制度を利用した医療費控除、そしてふるさと納税が重なる場合の控除上限額の計算方法について、その複雑な優先順位と具体的なステップを解説しました。
- 計算の優先順位を再確認しましょう: まずは所得控除(医療費控除やセルフメディケーション税制など)を適用して課税所得を確定させ、次に税額控除(住宅ローン控除など)を適用します。この順序が、ふるさと納税の上限額を決定する上での絶対的な鍵となります。
- 医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用: あなたにとってどちらが有利になるか、しっかりと計算し比較することが重要です。高額療養費制度を利用した場合は、補填される金額を差し引くのを忘れないでください。
- 住宅ローン控除の住民税からの控除に注意: 所得税で控除しきれなかった住宅ローン控除額が住民税から控除されると、ふるさと納税の住民税控除枠がその分減少し、結果的に上限額に影響を与えます。
これらの計算は非常に複雑であり、個々の状況によって細かな調整が必要です。もし計算に不安を感じる場合は、税務署の無料相談窓口や税理士などの専門家へ相談することも有効な手段です。
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