はじめに:複数の事業所得、ふるさと納税上限額の計算は複雑?
個人事業主として本業を持ちながら、副業として別の事業を行っている方、あるいは複数の事業を展開しているフリーランスの方にとって、「ふるさと納税の控除上限額をどう計算すればいいのか?」という疑問は尽きないでしょう。本業と副業、それぞれの所得を合算するのか、それとも個別に計算するのか、その方法が不明瞭だと感じている方も少なくありません。
結論からお伝えすると、ふるさと納税の控除上限額は、すべての事業所得を合算して計算するのが正解です。
この記事を読めば、複数の事業所得がある個人事業主やフリーランスの方でも、ご自身の正確なふるさと納税控除上限額を誰でも算出できるようになります。正しい計算方法をマスターし、損をすることなく、最適なふるさと納税額を知ることで、ふるさと納税のメリットを最大限に享受しましょう。
【大原則】ふるさと納税の上限額は「すべての所得」を合算して決まる
ふるさと納税の控除上限額は、個人の「総所得金額等」に基づいて算出されます。これは、複数の事業所得がある場合でも例外ではありません。所得税法では、所得の種類にかかわらず、個人のすべての所得を合算して課税する「総合課税」が原則とされており、ふるさと納税の控除上限額の計算もこの原則に則っています。
具体的には、事業所得が複数ある場合、それぞれの事業で得た所得(売上から経費を差し引いた利益)をすべて合算し、さらに他の所得(給与所得、不動産所得、雑所得など)も加えた金額が「総所得金額等」の基礎となります。複数の事業で赤字が出ている場合でも、他の事業の黒字と相殺する「損益通算」が行われ、最終的な所得額が決定されます。
対象となる主な所得の種類
- 事業所得:個人事業主の本業や副業など、事業から生じる所得
- 給与所得:会社員としての給料やアルバイト代など
- 不動産所得:アパートやマンションの賃貸などから生じる所得
- 雑所得:原稿料や講演料、ネットオークションの所得など、他の所得に該当しない所得
これらの所得を正確に合算し、そこから各種所得控除を差し引いた「課税所得」が、ふるさと納税の上限額を決定する最も重要な要素となります。
【3STEPで完了】複数の事業所得がある場合の上限額・算出方法
複数の事業所得がある場合のふるさと納税控除上限額は、以下の3つのステップで算出できます。
STEP1:あなたの「総所得金額等」を算出する
まず、ご自身の「総所得金額等」を算出します。これは、すべての事業の利益を合算し、さらに青色申告特別控除などを適用した後の金額です。
計算式:
(全事業の売上合計) - (全事業の経費合計) - 青色申告特別控除
確定申告書Bの第一表では、「所得金額等」の⑨番の金額がこれに該当します。この⑨番の金額は、各所得の合計から、所得金額調整控除や青色申告特別控除などが適用された後の総所得金額です。
STEP2:あなたの「課税所得」を算出する
次に、STEP1で算出した「総所得金額等」から、各種「所得控除」を差し引いて「課税所得」を求めます。所得控除が多いほど課税所得は少なくなり、結果としてふるさと納税の控除上限額は上がります。
計算式:
総所得金額等 - 所得控除の合計額
主な所得控除の種類
- 社会保険料控除:国民年金、国民健康保険、健康保険料、厚生年金保険料など
- 生命保険料控除:生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料
- 医療費控除:一定額以上の医療費を支払った場合
- 基礎控除:納税者全員に適用される控除(所得に応じて48万円〜)
- 扶養控除:扶養親族がいる場合
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金:全額所得控除の対象
確定申告書Bの第一表では、「課税される所得金額」の㉗番の金額がこれに該当します。
STEP3:控除上限額の計算式に当てはめる
STEP2で算出した「課税所得」に基づき、最終的な控除上限額を計算します。ふるさと納税の控除上限額は、以下の計算式で求められます。
計算式:
{ (住民税所得割額 × 20%) ÷ (100% - 住民税基本分10% - 所得税率×復興所得税1.021) } + 2,000円
- 住民税所得割額:一般的に「課税所得 × 10%」で簡易計算できます。
- 所得税率:ご自身の課税所得に応じた所得税率を以下の表で確認してください。
- 復興所得税:所得税額の2.1%が上乗せされます。
| 課税所得 | 所得税率 |
|---|---|
| 195万円以下 | 5% |
| 195万円超 330万円以下 | 10% |
| 330万円超 695万円以下 | 20% |
| 695万円超 900万円以下 | 23% |
| 900万円超 1800万円以下 | 33% |
| 1800万円超 4000万円以下 | 40% |
| 4000万円超 | 45% |
この計算式を用いることで、正確なふるさと納税の控除上限額を把握することができます。
ケーススタディ:具体的な年収・所得モデルで上限額をシミュレーション
ここでは、具体的なモデルケースを例に、上記の3STEPに沿ってふるさと納税の控除上限額をシミュレーションしてみましょう。
前提条件として、以下の所得控除を適用するものとします。
* 社会保険料控除:100万円
* 基礎控除:48万円(所得2,400万円以下の場合)
* その他の所得控除:なし
モデルケース1:事業所得(本業)500万円 + 事業所得(副業)100万円 の場合
| 項目 | 金額 | 計算過程・説明 |
|---|---|---|
| STEP1:総所得金額等 | 600万円 | (本業所得500万円 + 副業所得100万円) – 青色申告特別控除65万円 = 535万円 となりますが、ここでは簡略化のため、合算所得600万円から青色申告特別控除を差し引かない状態で計算を進めます。(正確には適用後の金額を使用) |
| STEP2:課税所得 | 452万円 | 総所得金額等 600万円 – (社会保険料控除100万円 + 基礎控除48万円) = 452万円 |
| STEP3:控除上限額の計算 | ||
| 住民税所得割額 | 45.2万円 | 課税所得452万円 × 10% = 45.2万円 |
| 所得税率 | 20% | 課税所得452万円の場合、所得税率は20%(税率表参照) |
| ふるさと納税控除上限額 | 61,350円 (概算) | { (452,000円 × 20%) ÷ (100% – 10% – 20% × 1.021) } + 2,000円 ≈ 61,350円 |
モデルケース2:事業所得(本業)600万円 + 事業所得(副業)▲50万円(赤字)の場合(損益通算)
| 項目 | 金額 | 計算過程・説明 |
|---|---|---|
| STEP1:総所得金額等 | 550万円 | (本業所得600万円 + 副業所得▲50万円) – 青色申告特別控除65万円 = 485万円 となりますが、簡略化のため合算所得550万円から青色申告特別控除を差し引かない状態で計算を進めます。 |
| STEP2:課税所得 | 402万円 | 総所得金額等 550万円 – (社会保険料控除100万円 + 基礎控除48万円) = 402万円 |
| STEP3:控除上限額の計算 | ||
| 住民税所得割額 | 40.2万円 | 課税所得402万円 × 10% = 40.2万円 |
| 所得税率 | 20% | 課税所得402万円の場合、所得税率は20% |
| ふるさと納税控除上限額 | 54,350円 (概算) | { (402,000円 × 20%) ÷ (100% – 10% – 20% × 1.021) } + 2,000円 ≈ 54,350円 |
モデルケース3:事業所得 400万円 + 給与所得(アルバイト)103万円 の場合
| 項目 | 金額 | 計算過程・説明 |
|---|---|---|
| STEP1:総所得金額等 | 503万円 | (事業所得400万円 + 給与所得103万円) – 青色申告特別控除65万円 = 438万円 となりますが、簡略化のため合算所得503万円から青色申告特別控除を差し引かない状態で計算を進めます。 |
| STEP2:課税所得 | 355万円 | 総所得金額等 503万円 – (社会保険料控除100万円 + 基礎控除48万円) = 355万円 |
| STEP3:控除上限額の計算 | ||
| 住民税所得割額 | 35.5万円 | 課税所得355万円 × 10% = 35.5万円 |
| 所得税率 | 20% | 課税所得355万円の場合、所得税率は20% |
| ふるさと納税控除上限額 | 48,250円 (概算) | { (355,000円 × 20%) ÷ (100% – 10% – 20% × 1.021) } + 2,000円 ≈ 48,250円 |
※上記シミュレーションは簡略化された概算であり、実際の控除額は個人の詳細な所得控除や税額控除によって変動します。正確な金額はご自身の確定申告書や税理士にご確認ください。
計算時の3つの重要チェックポイントと注意点
ふるさと納税の控除上限額を正確に計算するためには、以下の3つのポイントに特に注意しましょう。
注意点1:経費の計上漏れはないか?
事業所得を算出する際、経費を正確に計上しているかは非常に重要です。計上すべき経費を漏れなく計上することで、課税所得が圧縮され、結果としてふるさと納税の控除上限額の精度が高まります。交通費、消耗品費、通信費、家賃(家事按分)、接待交際費など、あらゆる経費を見直しましょう。
注意点2:青色申告特別控除(65万円/55万円/10万円)を正しく適用しているか?
青色申告を行っている個人事業主は、要件を満たせば最大65万円(e-Tax申告・複式簿記の場合)の青色申告特別控除を受けることができます。この控除額は所得から直接差し引かれるため、控除額が大きいほど総所得金額等が下がり、ふるさと納税の控除上限額計算に大きなインパクトを与えます。正しく適用されているか、今一度確認しましょう。
注意点3:iDeCoや住宅ローン控除など、他の税額控除・所得控除を忘れていないか?
ふるさと納税の控除上限額は、所得控除だけでなく、他の税額控除(住宅ローン控除、配当控除など)や所得控除(iDeCo、小規模企業共済掛金控除など)の影響も受けます。これらの控除を全て反映させないと、ご自身の控除上限額を過大に見積もってしまうリスクがあります。確定申告書で適用しているすべての控除をリストアップし、漏れがないか確認しましょう。
複数の事業所得者のための「ふるさと納税」Q&A
Q. ふるさと納税シミュレーションサイトは使えますか?
A. はい、使えます。ただし、入力すべき「年収」欄には、売上ではなく「すべての事業所得の合計額(青色申告特別控除適用後の金額)」に「給与所得」などを加えた「総所得金額等」を入力する必要があります。ご自身の確定申告書Bの第一表「所得金額等」の⑨番の金額に近いものを入力すると良いでしょう。各種所得控除額も正確に入力することで、より精度の高いシミュレーションが可能です。
Q. 確定申告はどのように行えばよいですか?
A. 通常の事業所得や給与所得などの確定申告に加えて、「寄附金控除」の欄にふるさと納税額を記入します。e-Taxを利用する場合、寄付金控除の項目で寄付先の自治体名や寄付金額を入力する画面がありますので、案内に従って入力してください。ワンストップ特例制度を利用しない場合は、必ず確定申告が必要です。
Q. ふるさと納税を行う年の所得が未確定ですが、どう計算すれば?
A. ふるさと納税は、その年の1月1日から12月31日までの所得に対して適用されます。年の途中で寄付を行う場合、その年の所得(売上や経費)の見込み額で計算することになります。年末に近づくにつれて所得がある程度確定してくるため、改めて計算し直し、必要であれば寄付額を調整することをおすすめします。特に事業所得は変動が大きいため、余裕を持った額で寄付し、後から追加で寄付することも検討しましょう。
正確な計算方法を理解し、ご自身の控除上限額が明確になったら、いよいよ魅力的な返礼品を探しに行きましょう。数あるふるさと納税サイトの中でも、さとふるは、手続きの簡単さや返礼品の発送の早さに定評があり、特に初心者の方や忙しい個人事業主の方におすすめです。PayPayポイントが貯まるキャンペーンなども豊富に開催されているため、賢く活用すればさらにメリットを享受できます。
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まとめ:全所得を正確に把握し、ふるさと納税を最大限に活用しよう
本記事では、複数の事業所得を持つ個人事業主・フリーランスの方に向けて、ふるさと納税の控除上限額の正しい算出方法を解説しました。
最も重要なポイントは、複数の事業所得を含むすべての所得を合算(損益通算)し、そこから経費や青色申告特別控除、その他の各種所得控除を正確に反映させた「課税所得」を算出することです。この課税所得が、ふるさと納税の上限額を決定する土台となります。
正しい計算方法をマスターすれば、安心してふるさと納税のメリット(地域の応援+魅力的な返礼品+実質2,000円の負担で節税効果)を享受できます。まずはご自身の昨年の確定申告書を元に、一度計算してみることを推奨します。それによって、今年の見込み額もより正確に予測できるようになるでしょう。
「感情論抜きで、一番安くて速いのはどこか?」を徹底検証。
元・家電量販店のスマホコーナー担当。
複雑な料金プランやキャンペーンの「裏の条件」を読み解くのが趣味です。
「なんとなく大手キャリア」で毎月損をしている人を見ると放っておけません。
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