確定申告書Aは廃止!会社員のふるさと納税、新様式の選び方

確定申告は、多くの会社員にとって馴染みが薄く、特にふるさと納税を始めたばかりの方にとっては、どの書類を使えばいいのか、どのように記入すればいいのかと疑問に感じることも少なくありません。かつては確定申告書AとBという2つの様式が存在し、多くの人が「自分はどちらを使うべきか」と頭を悩ませていました。

しかし、この選択は過去のものとなりました。現在は、確定申告の手続きが大幅に簡素化され、会社員の方も個人事業主の方も、全員が同じ新しい様式で申告を行うことになっています。

本記事では、確定申告書Aが廃止された背景から、新しい様式でのふるさと納税(寄附金控除)の具体的な申告手順、さらには申告ミスを防ぐための注意点まで、会社員が確定申告を正確に完了させるために必要な情報を網羅的に解説します。専門的かつ論理的な解説で、あなたの確定申告への疑問を解消し、スムーズな手続きをサポートします。

【結論】確定申告書Aは廃止。現在は1つの様式に統合されています

「確定申告書AとB、どちらを使えばいいのだろう?」という疑問は、令和4年分(2023年1月提出分)の確定申告から過去のものとなりました。

国税庁は行政手続きの簡素化およびe-Taxの利用促進のため、確定申告書Aを廃止し、確定申告書Bの様式に一本化しました。 これにより、会社員の方も個人事業主の方も、全ての方が「確定申告書」という1つの様式を使用することになります。

したがって、確定申告の経験が浅い会社員の方も、どの様式を選ぶべきか迷う必要は一切ありません。現在使用されている新しい様式で、ふるさと納税を含めた各種控除の申告を正確に行うことが求められます。

この記事では、会社員がふるさと納税の申告を新しい様式で正確に行うための全手順と注意点を詳しく解説します。

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▲ イメージ図: modern office desk with laptop, calculator, and neatly organized tax documents, soft focus background

旧・確定申告書AとBの機能比較|なぜ様式は一本化されたのか?

確定申告書の様式が一本化された背景を理解するためには、まず旧来の確定申告書AとBがそれぞれどのような機能を持っていたのかを知ることが重要です。

  • 旧・確定申告書A:

    • 対象となる所得: 給与所得、公的年金等に係る雑所得、配当所得、一時所得のみに限定されていました。
    • 利用対象者: 会社員や年金受給者など、所得の種類が比較的単純な方々が主な対象でした。
    • 特徴: 記入項目が少なく、比較的簡易な様式であったため、確定申告の経験が少ない方でも利用しやすいように設計されていました。
  • 旧・確定申告書B:

    • 対象となる所得: 所得の種類に制限がなく、給与所得、事業所得、不動産所得、退職所得など、全ての所得に対応していました。
    • 利用対象者: 個人事業主や不動産オーナー、副業所得のある会社員など、多様な所得を持つ方々が利用していました。
    • 特徴: 記入項目が多く、より詳細な所得や控除の情報を記載できる、まさに万能版の様式でした。

このように、かつては所得の種類によって使い分ける必要がありましたが、この一本化の目的は大きく2つあります。

  1. 行政手続きの簡素化: 複数あった様式を統合することで、書類作成の選択プロセスにおける利用者の混乱を解消し、申告手続き全体をシンプルにすることを目的としています。
  2. e-Taxへの移行促進: 複雑な様式の選択を不要にすることで、パソコンやスマートフォンからのe-Taxによる申告をよりスムーズにし、行政のデジタル化を推進する狙いがあります。

結論として、従来の「AかBか」という選択プロセス自体が不要になったことを明確に理解することが、現在の確定申告における第一歩となります。

【フローチャートで自己診断】会社員が確定申告すべき4つの条件

確定申告書の様式は一本化されましたが、そもそも会社員が確定申告を行う必要があるのかどうかという疑問は残ります。ここでは、会社員が確定申告をすべきか否かを判断するための4つの条件を提示します。

以下の質問に「はい」と答える項目が1つでもあれば、確定申告が必要です。

  1. 質問1:あなたの1年間の給与収入は2,000万円を超えていますか?
    • はい: 確定申告が必要です。年末調整の対象外となるため、自身で申告しなければなりません。
    • いいえ: 次の質問へ進みます。
  2. 質問2:給与所得・退職所得以外の所得(副業収入、不動産所得など)の合計が20万円を超えていますか?
    • はい: 確定申告が必要です。雑所得などとして申告しなければなりません。
    • いいえ: 次の質問へ進みます。
  3. 質問3:医療費控除、住宅ローン控除(初年度)、寄附金控除(ふるさと納税以外)、iDeCoなどの所得控除や税額控除を受けたいですか?
    • はい: 確定申告が必要です。これらの控除は年末調整では受けられないため、自身で申告することで還付を受けられます。
    • いいえ: 次の質問へ進みます。
  4. 質問4:ふるさと納税でワンストップ特例制度を申請していない、または6自治体以上に寄付しましたか?
    • はい: 確定申告が必要です。ワンストップ特例が適用されない場合や、6自治体以上に寄付した場合は、確定申告によって寄附金控除を申請します。
    • いいえ: 基本的に確定申告は不要です。

これらの条件に該当しない会社員の方は、勤務先での年末調整のみで納税が完了するため、原則として確定申告は不要です。

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▲ イメージ図: calm person contemplating finances, surrounded by a peaceful home office environment, natural light

新様式での申告手順|会社員のふるさと納税(寄附金控除)の書き方

ここからは、会社員が新しい確定申告書様式でふるさと納税(寄附金控除)を申告する具体的な手順を解説します。最も推奨される方法は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用したe-Tax申告です。

【Step1:必要書類の準備】

確定申告には以下の書類が必要です。漏れがないように事前に準備しましょう。

  • 源泉徴収票: 勤務先から発行されるものです。1年間の給与収入や徴収された税額が記載されています。
  • 寄附金受領証明書: ふるさと納税を行った自治体から送付される書類です。各自治体から個別に届きます。
  • マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類): 身元確認とマイナンバー確認のために必要です。
  • 還付金受取口座の情報: 還付金がある場合、振込先の金融機関名、口座番号などが必要です。
  • その他控除関連書類: 医療費控除を受ける場合は医療費通知書や領収書、iDeCoの掛金証明書など。

【Step2:申告書の入手(または作成コーナーの利用)】

確定申告書は以下の方法で入手できますが、e-Taxを利用する場合はこのステップは不要です。

  • 税務署で入手: 各地の税務署で配布されています。
  • 国税庁のホームページからダウンロード: 印刷して手書きで作成する場合に利用します。
  • 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用: パソコンやスマートフォンから情報を入力するだけで、自動的に申告書が作成されるため、最も効率的でミスを減らせる方法です。

【Step3:第一表の記入(所得と控除の基本情報)】

「確定申告書等作成コーナー」を利用する場合、画面の指示に従って情報を入力すれば自動的に計算・反映されます。手書きの場合は以下の点に注意して記入します。

  1. 源泉徴収票の内容を転記:
    • 「収入金額等」の「給与」欄に、源泉徴収票の「支払金額」を記入します。
    • 「所得金額等」の「給与」欄に、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を記入します。
  2. 寄附金控除の記入:
    • 「所得から差し引かれる金額」の「(28)寄附金控除」欄に、計算後の寄附金控除額を記入します。
    • 寄附金控除額の計算式は以下の通りです。
      (ふるさと納税額の合計 - 2,000円) × 所得税率 = 所得税からの控除額
      この計算結果が「(28)寄附金控除」に記入する金額ではありません。確定申告書では所得控除として「ふるさと納税額の合計から2,000円を引いた金額」を記入します。 税額控除分は自動計算されます。
      ただし、控除額には上限があるため、ご自身の控除上限額を超えた分は控除対象となりません。上限額は国税庁やふるさと納税サイトのシミュレーターで確認してください。

【Step4:第二表の記入(詳細情報の記載)】

第二表では、第一表に記載した内容の詳細を記入します。

  1. 「住民税・事業税に関する事項」の「寄附金税額控除」欄:
    • 「都道府県・市区町村への寄附(特例控除対象)」に、ふるさと納税の合計金額を記入します。
  2. 「所得の内訳」欄:
    • 源泉徴収票に記載されている内容(支払者の名称、所在地など)を転記します。

e-Tax(確定申告書等作成コーナー)を利用すれば、源泉徴収票や寄附金受領証明書の情報を入力するだけで、これらの金額が自動計算され、適切な欄に反映されるため、手計算によるミスを防ぎ、最も合理的でミスが少ない方法です。

申告ミスの防止策|会社員が陥りがちな3つの注意点

確定申告は正確さが求められる手続きです。特に会社員がふるさと納税で申告を行う際に陥りやすい3つの注意点を解説します。

注意点1:ワンストップ特例制度との併用は不可

ふるさと納税には、確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」があります。しかし、確定申告をする場合は、ワンストップ特例制度を申請していても無効となります。

  • ワンストップ特例制度を申請した後に確定申告をする場合: 確定申告書に、ワンストップ特例で申請したふるさと納税分も含めて、全ての寄付額を記載し直す必要があります。記載を忘れると、ワンストップ特例も無効となり、その分の控除が受けられなくなるため注意が必要です。
  • ワンストップ特例を申請せず確定申告する場合: 寄附金受領証明書に基づいて、全てのふるさと納税額を確定申告書に記載します。

どちらの方法を選択するにしても、二重に控除を受けることはできません。

注意点2:寄附金控除の上限額の確認

ふるさと納税の寄附金控除には上限額が設けられています。この上限額は、所得や家族構成(扶養控除の有無など)によって変動します。上限額を超えた寄付は、控除の対象外となり、自己負担となります。

  • 事前シミュレーションの実施: 国税庁や主要なふるさと納税サイト(例:さとふる、楽天ふるさと納税など)では、所得額や家族構成を入力することで、おおよその控除上限額を試算できるシミュレーションツールが提供されています。必ず寄付を行う前に、これらのツールを利用してご自身の控除上限額を確認しましょう。
  • 控除上限額の超過に注意: 特に初めてふるさと納税を行う方や、年収が変動した方は、控除上限額を超えて寄付してしまうケースが見られます。

注意点3:他の控除の申告漏れ

ふるさと納税の寄附金控除以外にも、会社員が受けられる所得控除や税額控除は多数存在します。確定申告を行う機会を利用して、他に適用できる控除がないか最終確認を行いましょう。

  • 医療費控除: 1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定額(原則10万円、または所得の5%)を超えた場合に対象となります。
  • iDeCo(小規模企業共済等掛金控除): 個人型確定拠出年金iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象となります。
  • 生命保険料控除、地震保険料控除: 年末調整で申告し忘れた場合でも、確定申告で追加申告が可能です。
  • 住宅ローン控除(初年度): 住宅を新築・購入した年の住宅ローン控除は、確定申告が必須です。

これらの控除を見落とすと、本来受けられるはずの還付金を受け取れないことになります。申告漏れがないよう、ご自身の状況を再確認してください。


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まとめ:確定申告書の選択は不要。新様式で正しく控除を受けよう

本記事では、確定申告書Aが廃止され、現在では1つの様式に統合されていること、そして会社員がふるさと納税を含めた確定申告を正しく行うための手順と注意点について解説しました。

  • 確定申告書の選択は不要: 確定申告書AとBは統合され、現在は「確定申告書」という1つの様式に集約されています。会社員がふるさと納税の申告をする場合も、この新しい様式を使用します。
  • 申告の必要性を確認: 給与収入2,000万円超、副業所得20万円超、各種控除の申請、ワンストップ特例を利用しないふるさと納税など、ご自身が確定申告の対象となるかを確認することが重要です。
  • e-Taxの活用を推奨: 最も効率的でミスを減らせる方法は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用したe-Tax申告です。自動計算機能により、簡単に正確な申告書を作成できます。
  • 申告ミスの防止策: ワンストップ特例との併用不可、寄附金控除上限額の確認、他の控除の申告漏れ防止など、注意点を押さえて正確な申告を心がけましょう。

本記事で解説した手順と注意点を参考に、正確な確定申告を完了させ、ふるさと納税による税控除を確実に受け取りましょう。

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