近年、ふるさと納税の利用者が増加する一方で、「大量の返礼品が届き、消費に困ってしまう」という声も聞かれるようになりました。特に、米や肉、魚介類といった食品系の返礼品は、一度に届く量が多く、消費期限も限られているため、親しい友人や知人への「おすそ分け」を検討する方も少なくありません。
しかし、この「おすそ分け」が、税務上・法律上、思わぬ問題を引き起こす可能性はご存知でしょうか。個人間の物のやり取りは一般的な行為ですが、そこには「贈与税」や「一時所得」といった税金の論点、さらにはSNSなどでの募集における「法的リスク」が潜んでいます。
本記事では、ふるさと納税の返礼品を他者に譲渡する際の注意点を、贈与税、一時所得、そしてSNSでの募集における法的リスクという3つの観点から、専門的かつ客観的に解説します。結論として、常識の範囲内での無償譲渡は問題ないケースがほとんどですが、知識がないと思わぬトラブルに繋がる可能性があるため、正確な理解が不可欠です。
【論点1】友人への譲渡は「贈与税」の対象になるか?
ふるさと納税の返礼品を友人や知人に無償で譲渡する行為は、原則として「贈与」に該当します。日本の税法では、個人から財産を無償で受け取った場合、受け取った側に贈与税が課税されることになります。
しかし、全ての贈与が課税対象となるわけではありません。贈与税には、年間110万円の「基礎控除」が設けられています。これは、1月1日から12月31日までの1年間で、贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税は課税されず、申告も不要であるというものです。
ふるさと納税の返礼品の評価額は、一般的に市場販売価格の3割程度が目安とされています。例えば、市場価格2万円相当の米60kgを友人に譲渡した場合、返礼品としての評価額は約6,000円となります。この金額が年間110万円の基礎控除額を超えるケースは、極めて稀であると言えるでしょう。
ただし、注意すべき点があります。同一年内に、返礼品以外にも現金やその他の財産を同じ人から、あるいは別の人から贈与されている場合、それらの贈与財産と返礼品の評価額を合算して110万円を超えないか確認が必要です。この基礎控除は、贈与を受けた人ごとに適用されるため、複数の人から少額ずつ贈与を受けても、合計額が110万円を超えれば申告・納税の義務が生じます。
【論点2】返礼品は「一時所得」。譲渡以前に本人が留意すべき税務知識
ふるさと納税の返礼品は、寄付者本人の所得として税務上の扱いを受けます。所得税法上、返礼品は「一時所得」に分類されます。一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対性質を持たない一時的な所得を指します。生命保険の一時金や懸賞金などがこれに該当し、ふるさと納税の返礼品も同様に扱われます。
一時所得には、年間最大50万円の「特別控除」が適用されます。このため、返礼品が課税対象となるか否かは、以下の計算式で判断されます。
(返礼品の評価額の合計) – 50万円
この計算結果がプラスにならない限り、課税対象とはなりません。前述の通り、返礼品の評価額は市場価格の3割程度が目安とされているため、例えば年間で150万円相当(市場価格)の返礼品を受け取ったとしても、その評価額は45万円程度となり、50万円の特別控除の範囲に収まることがほとんどです。
生命保険の一時金や懸賞金など、他の一時所得がある場合は、それらと合算して50万円の特別控除を適用することになります。しかし、一般的な給与所得者がふるさと納税の返礼品を受け取ったことによって、一時所得が50万円を超え、追加で確定申告が必要となるケースは稀です。
結論として、ほとんどの給与所得者は、ふるさと納税の返礼品を受け取ることによる追加の確定申告は不要であると認識しておいて問題ありません。

【論点3】SNSでの「おすそ分け募集」に潜む3つの法的リスク
親しい友人への無償譲渡であれば問題が生じにくい返礼品ですが、SNSなどを利用して不特定多数へ「おすそ分け」を募集する際には、いくつかの法的リスクが伴います。
リスク1【転売禁止規約違反】
多くの自治体やふるさと納税サイトは、返礼品の「転売」を禁止する規約を設けています。これは、ふるさと納税制度が「寄付」であり、その返礼品はあくまで寄付者への感謝の品であるという趣旨に反する行為だからです。
「おすそ分け」と称していても、送料や手数料など、何らかの金銭の授受が発生した場合、それは「有償譲渡」と見なされ、転売行為と判断されるリスクがあります。自治体の規約に違反した場合、今後のふるさと納税利用に影響が出る可能性も否定できません。
リスク2【古物営業法違反】
反復継続して有償での譲渡(販売)を行う場合、古物営業法の「古物商許可」が必要となる可能性があります。ふるさと納税の返礼品は「新品」であることがほとんどですが、一度個人の手に渡った物品を反復して有償で譲渡する行為は、無許可での古物営業と判断されるリスクが生じます。特に、継続的に多数の返礼品を譲渡し、利益を得ていると判断された場合は、このリスクが高まります。
リスク3【食品衛生・安全性の問題】
特に生鮮食品などの返礼品を譲渡する際、保管状態によっては食中毒などのトラブルに発展するリスクがあります。個人間での食品の譲渡は、プロの販売業者のような品質管理体制が整っているわけではありません。万が一、譲渡した返礼品が原因で健康被害が生じた場合、責任の所在が曖昧になり、大きなトラブルに発展する可能性があります。食品を取り扱う際は、特に慎重な対応が求められます。
これらの法的観点から、SNSで不特定多数へのおすそ分け募集は避けるべきです。直接の知人・友人の範囲に留め、かつ無償での譲渡に限定することが、最も安全かつ合理的な選択と言えるでしょう。
【早見表】ケース別・ふるさと納税返礼品譲渡の法的リスク判定
ふるさと納税の返礼品を譲渡する際の法的リスクについて、具体的なケース別に早見表で示します。
| 譲渡のケース | 法的リスクレベル | 留意点 |
|---|---|---|
| 生計を同一にする家族内での消費 | 安全 | 贈与税の対象外。制度の趣旨にも合致。 |
| 親しい友人・知人への無償での「おすそ分け」 | ほぼ安全 | 贈与税の基礎控除(110万円)の範囲内であれば問題なし。 |
| SNSの鍵付きアカウントで、相互フォローの友人限定での無償譲渡募集 | グレーゾーン | 転売禁止規約違反のリスクは低いが、金銭の授受がないことを明確に。食品衛生には注意。 |
| SNSの公開アカウントで、不特定多数に向けたおすそ分け募集(送料のみ負担依頼など) | 危険 | 転売禁止規約違反、古物営業法違反のリスクが高まる。食中毒等の責任問題も発生しうる。 |
| フリマアプリやネットオークションでの有償販売 | 違法 | 転売禁止規約違反、古物営業法違反に該当。制度の趣旨に反し、自治体からの指導や措置の対象となる可能性が高い。 |

まとめ:法的知識を武器に、ふるさと納税制度を正しく活用する
ふるさと納税の返礼品を譲渡する行為は、一見すると些細なことのように思えますが、税務上・法律上の複数の論点が絡み合っています。
本記事で解説したポイントをまとめると以下の通りです。
- 贈与税の心配はほぼ不要: 親しい友人への常識的な範囲の「おすそ分け(無償譲渡)」であれば、年間110万円の基礎控除を超えることは稀であり、贈与税の心配はほとんどありません。
- 寄付者本人も課税されないケースがほとんど: 返礼品は「一時所得」に分類されますが、年間50万円の特別控除があるため、ほとんどの給与所得者は返礼品を受け取ることによる追加の課税は発生しません。
- SNS等での不特定多数への呼びかけは避ける: 最も注意すべきは、SNSなどを利用した不特定多数への譲渡募集です。転売禁止規約違反、古物営業法違反、食品衛生上の問題など、様々な法的・衛生上のリスクを伴います。直接の知人・友人の範囲に留め、無償での譲渡を徹底することが重要です。
ふるさと納税は、税金の控除を受けながら地方を応援し、魅力的な返礼品を受け取れる素晴らしい制度です。しかし、その恩恵を最大限に享受するためには、制度のルールや関連する税法・法律に関する正確な知識が不可欠です。返礼品を選ぶ際は、消費・保管しきれる量を計画的に選ぶことが、結果として最も賢明な選択と言えるでしょう。
もし、返礼品の扱いや税金に関して疑問が残る場合は、管轄の税務署や税理士などの専門家に相談することを強く推奨します。
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「感情論抜きで、一番安くて速いのはどこか?」を徹底検証。
元・家電量販店のスマホコーナー担当。
複雑な料金プランやキャンペーンの「裏の条件」を読み解くのが趣味です。
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